出張で初めて訪れた沖縄。足を伸ばして訪れた離島観光で、一気に島旅ファンに!
友野さんは元々、大阪で会社員として忙しい毎日を送っていました。出張で初めて沖縄本島を訪れた際、宮古島や石垣島まで足を伸ばし観光したことから、生活が大きく変化したといいます。
「島旅にはまって、休暇を調整して毎月のように離島旅行に行くようになりました。LCC(格安航空会社)便とフェリーを駆使して、八重山の島々を巡ったり、奄美大島から加計呂麻島、徳之島、与論島まで、島から島へ旅するアイランドホッピングもやっていました。」
会社員をしながら島旅をする生活が2年ほど続いた頃、仕事に一区切りがついたと感じた友野さんは、長年働いた会社を退職することにします。
「第一の人生、第二の人生じゃないですけど、次はどこか離島でゆっくり暮らしたいなと思ったんです。最初はのんびり急がず、色々な島を見て回ろうと思って、沖縄本島周辺から宮古諸島、八重山諸島まで、たくさん旅しました。特に魅かれたのが、黒島と宮古島、そして多良間島でした。満天の星空、海、漂う雰囲気がとにかく好きなんです。」
島を巡る日々の中、そろそろ仕事を見つけて移住先を決めようと思っていた頃に、多良間村の地域おこし協力隊※の募集を見つけて応募し、採用されたのでした。
(※地域おこし協力隊:都市部から田舎地域に移住をして地域の困りごとや課題を解決する「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る国の制度です。隊員は各自治体の委嘱を受け活動し、任期はおおむね1年から3年以内です。)
「小さな離島は住宅不足で、暮らせるだけの仕事を見つけるのも大変と聞いていたので、多良間島も同じような状況だろうなと思っていました。それが地域おこし協力隊として着任すれば、住まいも仕事も得られて大好きな島に住める。このチャンスを逃したくない、と思いました。」
島には海に出る小道がたくさんあり、島民に”トゥブリ”と呼ばれています。
地域おこし協力隊として移住、島が好きだからこそ見えてきた課題に向き合って
多良間村の協力隊として着任した友野さんのお仕事は、FacebookなどのSNSを使って村の情報を発信したり、観光協会や島でのイベントの企画や運営することでした。県外で開催される物産展にも積極的に出向き、村のPRに努めました。一方で、移住者としての自分を島の方々に知ってもらおうと、祭礼行事から敬老会、地域の清掃会など、村の行事に片っ端から参加したといいます。
「自分を知ってもらうという目的もありましたけど、島のやり方に入ってその流れを知りたいとも思って参加していました。驚いたのが、着任した11月は村で一番行事の多い月だったんですね。毎週土日に集落のどこかで行事をやっていて、その全部に顔を出してお手伝いを買って出ました。島の生活は、もう少しのんびりしたものだと思っていましたが、いざ中に入ってみると本当に忙しくて大変なんだと知りました。」
はじめのうちは、どこの人だろう?と遠巻きに見ていた島の人たちも、友野さんが地域の作業や行事の準備を手伝い、交流していくうちに互いに打ち解けていったといいます。今では浜での遊びや貝探し、バーベキューも兼ねた焚き火会などに誘ってくれる家族ぐるみの仲になったご家庭もあるそうです。
「それから、移住したばかりの頃は、島をたくさん歩いて回りました。歩いて回ると色々な発見があるんですよ。この道はこの港に出るのか、とか、この茂みを抜けるとこんな綺麗な浜辺に出るんだ、とか。よく夕方に歩いて港へ行って、夕日が沈むのも眺めていました。歩いて回ったおかげで、車では通り過ぎて見逃してしまうような島の絶景や、おすすめの場所をたくさん見つけることができました。」
地域への愛着が増すほど、友野さんは村の将来について考えるようになったそうです。多くの過疎地や小規模離島と同様に、多良間村も人口減少が課題です。このままでは島の文化や生活を維持していくことも難しくなる日が来るかもしれません。友野さんは地域を活性化できる何か糸口を見つけられないかと、沖縄県主催の移住や関係人口の研修に参加しました。地域住民の方々や役場の職員さんたちの協力を得ながら、島外の人を受け入れる移住体験ツアーや、プチ移住体験ができるふるさとワーキングホリデーの実施にも取り組みました。参加者や地域の方々の満足度も高く、多くの出会いとつながりの機会をつくることができたそうです。
2018年に沖縄県移住促進事業の一環で実施した「多良間村リピーター向け移住体験ツアー」では、6名のツアー参加者が村の運動会に参加しました。
「どんなことが役に立つかわからないから、協力隊のうちに色々な研修に参加したり、資格を取りました。多良間の素晴らしい星空を、もっと多くの観光客に楽しんでもらえないかと思って、『星空案内人』の資格をとりました。それから任期終了後に何か飲食の商売を始めようと思って、食品衛生管理者の資格をとったりもしましたね。それが今のお弁当屋さんの開業に役立ちました。」
沖縄県移住定住事業の一環で実施された「令和元年度中間支援組織養成講座」を受講し、受講修了証を受け取る友野さん
友野さんの任期最終年はコロナ禍の入り口にかかり、活動が大きく制限されてしまいました。協力隊卒業後の一年間は、村立小中学校の図書館の臨任司書として働き、その間に起業の準備を進めたとのことです。
「はじめは朝からやっているおにぎり屋さんをやるアイデアもあったんですけど、地域のニーズや少ない食品ロス、生活できるだけの利益が出るかなどを考えて、最終的に予約制のお弁当屋さんをやることにしました。」
お店はコロナ自粛期間中にオープン。大きな宣伝をせずに始めましたが、評判が口コミで広がり、注文が増えていったといいます。注文を通じて、顔見知りになる地域の人も増えました。お弁当やオードブルを心を込めて一つ一つ作り続けてきて、友野さんのお弁当屋「toco + moca」は、今年の6月で開業して丸3年を迎えます。
「地域の人に支えられてここまで続けられてきたと思っています。これからも地域の皆さんに喜ばれる、美味しく温かいお弁当を提供していきたいです。」
インタビュアー
Profile / 黒川祥子
東京から那覇市へ移住。平成29年度〜令和4年度まで沖縄県移住コーディネーターを勤めた。
多良間村にある、友野さんのお弁当屋「toco + moca」は、不定休で事前予約制です。
多良間村にご滞在の際は、お問合せの上ご利用ください。
お弁当屋 toco + moca
※テイクアウトのみ
※状況に応じての対応となります。
※要予約(前日まで)
TEL: 080-6497-3875