いま沖縄県では、大宜味村、国頭村、東村、伊江村、そして石垣市にお住まいの65歳以上の方を対象とした見守りサービス「やさしいみまもり」を、2024年2月まで無料で利用できる取り組みを行っています。
この見守りサービスの特徴は、プライバシーに配慮しカメラ等は使わず、センサーを設置するだけで居住者の動きや睡眠時間を検知しデータ化できることです。また、記録されたデータはスマホやタブレットで簡単に確認することができます。
今回、このサービスを利用しているご家族と、サービス運営企業の担当者にお話を伺いました。
- 松永恵子さん(右から3番目):見守りサービス利用者(母:大宜味村在住)
- 松永かおりさん(左から3番目):見守りサービス利用者(子:宜野湾市在住)
- 佐久本さん(左から2番目):株式会社おきでんCplusC(見守りサービス運営企業)
ー こんにちは、今日はよろしくお願いします。まずはじめに、この見守りサービスを知ったきっかけを教えてください。
松永かおりさん(以下 かおりさん)
ふだん定期的に母の家を訪問してくださっている包括支援センターの方が「一人暮らしで気になる方がいる」と、おきでんCplusCさんにお声をかけてくれたようです。そして同社の佐久本さんが包括支援センターの方と一緒にサービスの説明をしに来てくれました。
ー このサービスを使ってみたいと思ったのはなぜですか?
かおりさん
母は最初、見守りサービスと聞いて「カメラに映りたくない」と嫌がりました。私も、携帯電話や固定電話もあるし、母にはいつでも連絡できるから必要ないと思っていました。
でも、包括支援センターの方や佐久本さんにサービスの詳しい話を聞いて、まず、カメラを使わずに見守りしてもらえることが理解できました。そして、今後を考えると自分たちにも必要なサービスではないかと感じました。
ただ、電気代が高くなってしまうのではないか?とか、機器が高価なのではないか?、という不安もあって、年金だけで暮らしているような私たちが果たして使えるサービスなのだろうかと、とても迷いました。
ですが最終的には、母が転んで骨を折ったことがきっかけで導入を決めました。母が家で何をしているのか、離れて暮らしている私たちには分からない時間が多いので、何かあったらとても怖いと実感したんです。
それから、台風の時に道が封鎖されたり、高速道路が通行止めになったりすると、ここ大宜味村にある実家に来ることができなくなるので、それも導入を決めた理由のひとつです。そのような緊急時にもこのサービスは、家族の力になると思います。
松永恵子さん(以下 恵子さん)
転んで骨を折った時は、ひとりで起き上がることもできなくてとても大変でした。いまは、佐久本さんが「調子はいかがですか?」と定期的に回ってきてくれるのでとても助かります。家族より近い存在だなと思います(笑)。
かおりさん
タブレットに慣れている人なら、自分でも睡眠時間を確認することができるので、体調管理などにも使えそうですね。
ー 機器の設置は大変ではなかったですか?
かおりさん
センサーなど機器の取り付けは、全て佐久本さんにやっていただきました。
ー 機器の操作方法は難しくなかったですか?
恵子さん
私は、タブレットを直接触ることはないのですが、娘が家に来た時にタブレットでデータを見たりしているようです。
かおりさん
見守りデータは、スマートフォンで見られるので特に難しくはありません。ただ、セキュリティの関係で毎回ログインする必要があるので、パスワードは何だったかな?となることはたまにあります(笑)。
ー このサービスを使ってみて良かったことを教えてください
かおりさん
わざわざ電話をしなくても、データを見て母が元気に生活していることを確認できるので、いまではこのサービスをとても頼りにしています。
また、母の睡眠データもスマートフォンで確認できるので、病院で母のお医者さんにデータを見せて相談できるのはとても便利です。実際には、1週間分のデータをまとめてお医者さんに見せながら、このような状態なんですが大丈夫でしょうか?と健康診断のように相談をしています。
ー これからも使い続けたいですか?
恵子さん
そうですね!
かおりさん
はい、使い続けたいです。自分の母親を見守りしていただけることでの、家族の安心感がとても大きいです。もっとこのサービスが広がっていったら素晴らしいなと思います。
それから、いま大宜味村はどんどん人口が減っているので、お年寄りだけじゃなく赤ちゃんの見守りなどもできるようになれば、住む人が増える可能性もあるかもしれません。いろいろな助けが必要な方がこのツールを使うことができれば、とても良いと思います。
佐久本さん
同じ大宜味村に一人で住んでいる方で「住み慣れた地域に住み続けたいけれど、交通が不便」とか「お買い物ができない」「 家族が心配している」といった理由で中南部に引っ越しせざるを得ない方も結構います。一方で「この見守りサービスを導入したことで住み慣れた場所に住み続けられている」という方もいらっしゃいます。今後もそのような形で皆さんの願いを叶えていきたいです。
ー このサービスを周りの方にも紹介したいですか?
かおりさん
知り合いに「お母さんに会いに行かないの?」と時々聞かれることがあるんですが、その時にこのサービスのことを説明すると、どういうサービスなのか皆さんとても興味を持って聞いてきます。
このサービスのことを知らない人もまだ多いですので、メリットが多いのでもっと広がっていくといいですね。そうなれば”お年寄りを大事にしてくれる沖縄県”というイメージを県外にアピールするのにも一役買うでしょう。このサービスが広がることで、お年寄りが長生きする県にまた戻ってほしいと心から思います。
恵子さん
はい、そうですね。私がこの見守りサービスを利用できることは、私や家族の小さな幸せですが、この仕組みがもっと広がっていけば、とても大きな幸せに繋がると思います。
【サービス解説】「やさしいみまもり」について
「やさしいみまもり」は、wi-fiセンシング技術を活用して、プライバシーに配慮しながら高齢者などの活動状況や睡眠時間を確認することができる見守りサービスであり、那覇市、浦添市などのほか、国頭村、大宜味村、東村、伊江村、石垣市でもサービスを提供しています。
仕組みとしては、寝室やリビングなど見守り対象者が一日を通して長く居る場所にセンサーを設置します。そして、家の中で人が動いているかどうかをそれらのセンサーが感知し、データとして記録する仕組みです。プライバシーに配慮しカメラやマイクを使わないことや、記録したデータをスマホやタブレットで簡単に見られることが特徴です。
そして、例えば記録データから睡眠時間が少ない様子が読み取れたら「昨日に比べて今日は、少ししか眠れていないようだけど大丈夫かな?」、ふだん家にいる時間なのに動きがないデータになっていたら、「家の中で倒れているかもしれない」など、離れて暮らしているご家族がいち早く、親御さんの体調の異変に気づける仕組みとなっています。
ご家族は、スマートフォンで24時間データを見ることができ、ご本人もタブレットでそのデータを確認できます。
また、設置したら終わりということではなく、併せて「お気遣い訪問」をしています。これは、このサービスの利用者を定期的に訪問し、30分くらい会話をするものです。
一人暮らしの方だけでなく、ご家族と住んでいても日中は一人になる時間が多いという方なども、この「やさしいみまもり」を利用されているケースが多くあります。
現在、石垣市、国頭村、大宜味村、東村及び伊江村では、県の補助事業により、見守りの必要性など一定の要件を満たした方を対象に、一定期間の間、利用料などが無料でサービスを受けることができます。