沖縄市出身の神谷さんは、現在津堅島で民宿「神谷荘」を経営しながら、津堅島と沖縄市を行き来する2地域居住を実践されています。東京での生活経験もある神谷さんに、離島と都市部を拠点とする2地域居住ならではの良さや苦労、また地域への思いなどをじっくり伺ってきました。先輩2地域居住者プロフィール名前:神谷恭平(かみやきょうへい)さん職業:自営業出身地:沖縄市2地域居住開始時期:2020年2地域居住場所:津堅島・沖縄市−−−今日はよろしくお願いします。神谷さんは津堅島と沖縄市の2つの地域を拠点として暮らしていらっしゃいますが、はじめに2地域居住をスタートしたきっかけを教えていただけますか?津堅島で祖父が運営していた民宿を引き継いだことが2地域居住を始めたきっかけです。宿泊のお客様への対応業務がかなり多かったため、それまで暮らしていた沖縄市に加えて、生活拠点を津堅島にも作ろうと思いました。−−−おじいさんはいつから民宿を経営されていたのでしょう?そして、神谷さんはいつ引き継いだのでしょうか?祖父は40年前から民宿を経営していたのですが、私自身はコロナ禍の2020年に引き継ぎました。−−−孫の神谷さんがゆかりの地に戻ってきたということですね。2地域をどのように暮らし分けていますか? また、どのくらいのペースで行き来をしていますか?生活実態は津堅島にあり、週に1回ほど、仕事の打ち合わせや市役所での用事、プライベートでの飲み会などがある時に本島に渡っています。決まったペースがあるわけではありません。−−−現在は津堅島を生活拠点とされていますが、沖縄の離島で暮らすメリットはなんだと思いますか?圧倒的に豊かな自然があり、その環境が精神衛生上とても良いということです。例えば津堅島には、沖縄県内トップクラスの透明度を誇るトゥマイ浜があったり、観光地化が進んでないからこその離島の静けさがあったり。夏には天の川が見えるほどの星空が広がります。そんな自然に囲まれていると、篭りっぱなしのパソコン作業などをしていても、一歩外に出るだけでリフレッシュできますよ。また、ここでは過疎化が進む反面、自分の活動が島に反映されやすいのも魅力です。島に関わる仕事をするのであれば、過疎地域であればあるほど自分の仕事にやりがいを感じることができると思います。例えば東京の街で町おこししようと一事業者が頑張っても、他の団体や事業者もたくさんいる中、貢献度みたいなものは低く感じると思います。過疎地域であれば、自分の掲げたテーマでの島おこしが地域に反映されやすいと感じます。とてもやりがいがありますよ。−−−なるほど、神谷さんが継続している「音楽で島おこし」もその一例ですね。とてもユニークな取り組みですが、毎日お昼12時開演のライブもその一環でしょうか?はい。民宿で行っているライブはYouTubeで配信していますが、私たちにとっては重要な位置付けです。さまざまな音楽ファンが視聴してくれていて、中には民宿のリピーターの方も多くいます。YouTube以外にも、民謡歌手の神谷幸一さんをはじめ実力派の歌い手による沖縄民謡ショーや、島内ガイド、津堅島を熟知したフォトグラファーが撮影するブライダル写真など、さまざまなオリジナルサービスを提供しています。−−−島まるごとスタジオという感じで、島の活性化にも広く貢献されているのですね。ところで、2地域居住での苦労があればそちらも教えていただけますか?まず、沖縄本島での突発的な用事に対応できないことです。また、沖縄本島に置いてある車や借りている部屋の管理も大変ですね。車が港に置きっぱなしになるので、錆の進行が早いんです。また、部屋を空ける期間が長いと、埃やカビの清掃がひと苦労です。あとは、食材が急に足りなくなった場合に買い出しができないこととか、車両や工具、設備が故障した場合に、緊急で業者に対応を依頼できないことも苦労としては大きいですね。本島に渡った後、津堅島に忘れ物してきたことに気付く場合もあります。車や家の鍵を島に忘れ船に乗ってしまい、港で立ち往生して取りに帰ることもありましたよ。−−−私たちには分からない苦労も多いのですね。津堅島から沖縄市までの移動時間はどのくらいでしょうか?津堅島からうるま市内の港まで、船での移動は15分から30分程度です。その港から沖縄市までは車で30分ほどです。−−−津堅島での1日の生活サイクルを教えてもらえますか?朝5時30分には起きて、8時までに朝食を調理します。8時から11時まではレストランの仕込みと宿泊部屋の用意の作業ですね。そして11時から14時まではレストラン対応、その後14時から17時に休憩をとったり雑務をこなしたりします。17時から21時は宿泊客対応で、21時30分に就寝、という感じですね。−−−2地域居住する前とした後で、自身の考え方、生活習慣、趣味などの面で変化はありましたか?自分だけではなく、地域と共に暮らす考え方に大きく変わりました。狭いコミュニティなので、より深い人間関係の構築が求められます。行う事業も自分だけが利益を得ようという考えではなく、島のためになるような清掃活動や寄付活動などを事業に絡めることを意識しています。例えば、私たちのYouTubeチャンネルでの収益や、津堅島の海や島をイメージしたコースターやキーホルダーなどの収益の一部をアーティストに還元したり、津堅島ビーチクリーンなど島内環境整備に使っています。−−−2地域居住に限らず、他府県や県内他地域からの移住成功の秘訣はそのあたりにもありそうですね。ところで2地域居住される前はどのような生活を送っていたのでしょうか? 津堅島に来る前は東京で仕事をしていたんですが、仕事の都合上お昼12:00ごろに出勤して、夜中の1:00頃に帰宅、就寝は3:00頃という生活でした。いまでは生活習慣が夜型から完全に朝型に変わりましたね。−−−離島への移住を考えている人にとって、2地域居住の良さはどんなところにあると思いますか?居住する場所を一箇所に縛らないことでの安心感ですね。離島に住むとなると、どうしても漠然とした不安があると思うんです。離島じゃなくても、引っ越しする前はその地域の良いところよりも不便なところをつい探してしまいませんか? 2地域居住という形をとることで、離島移住への精神的なハードルがぐっと下がると思うんです。離島の生活には不安がつきもので、例えば日々の食料調達や災害時のことなど、考えたらキリがありません。ですが、本島にも拠点があることで気持ち的に離島移住に踏み出しやすくなると思います。−−−おっしゃるとおりですね。それでは最後に、2地域居住を検討している人へのメッセージをお願いします。2地域居住にはメリットもデメリットもあります。2拠点での生活を継続的に続けることは体力がいるので、実は私はこれから一箇所での生活に絞る予定です。2地域で暮らしていても、最終的には一箇所に絞って生活していけるようなイメージを持つことが大事だと感じています。−−−絞るというのは、居住地を津堅島に絞る、ということですね?はい、もちろん津堅島です!神谷荘ホームページhttps://www.kamiyasou.com/