地方移住をする際に、まずは地方の都市部に移住し、そこを拠点に自分に合った田舎の地域を見つけて移り住む「ステップ移住」という言葉を聞いたことはありますか?本土から沖縄の豊見城市に移住後、理想の田舎暮らしを求めて名護市久志地域へステップ移住した山本勇樹さんにお話しを伺いました。 いよいよ、やんばるへステップ移住実は沖縄に移住するときに、本当は北部の方に来たかったんです。ただ、いきなり北部に移住するのは、空港からも遠いし、簡単じゃない。最初の頃、北部の店を見に来たことがあって、いいお店だなと感覚的に思いました。地域の雰囲気が良く、昔ながらの沖縄が残っていて、いつか移住したいという思いは持っていました。ただ、自分たちがこういう田舎でどこまでやっていけるのか、という不安もありました。田舎だと人とのコミュニケーションも近くなるだろうから、その大変さも想定できましたし。そういう中で子どもたちがどう育っていくのかな、ということも不安の一つでした。(志穂さん)いきなり北部に来ても住めることは住めるんでしょうけど、移住してきたときのショック度が違ったかもしれないですね。山本さんご一家が移住した名護市久志地域は、東海岸側の美しい海を臨むエリア ステップ移住の一番の苦労は、住まい探し住む場所を探すのが本当に大変でした! 結局1年くらい探しましたね。私たちは沖縄出身じゃないから、親族に頼るということも出来ない。空き家があっても仏壇があって貸せないとか、市営住宅は3ヶ月以上名護市内に住んでいないと駄目とか、いろんなハードルが出てきました。でも、もう店も始めるし、どうしよう、となりましたね。お店がある久志地域の学校に通わせたかったんですが、送迎バスは名護市内じゃないとだめ。バスのルートもあるから、バス停が少しでも近くにないといけないので、名護市田井等(たいら)に移住しました。それが2020年4月のことで、住む場所は学校メインで決めています。移住と同時期に店の経営を引き継いだんですが、家と店はだいぶ遠くて、車で30分以上かけて店まで通いました。学校も遠くて、子どもたちは朝6時くらいにバスに乗って送ってもらっていました。その後市営住宅の入居条件を満たせたので、2021年6月からお店からほど近い市営住宅に移りました。久志地域安部の風景。車の往来も少なく、行き交う人は誰もが顔見知りというのも頷ける。 やんばるでの暮らしが始まって(志穂さん)店の前オーナーがこの店のある安部(あぶ)地区出身で、地域の人たちは店のことは知ってくれているので入りやすかったというのはあるけれど、最初はちょっと壁を感じることもありました。挨拶だけはしていましたけど、なかなかうまくコミュニケーションが取れなかった。思い描いていた形に近づいているかなと感じたのが1年後くらいですね。ふとしたときにお願いごとをされたり、「何かあったら言いなよ」といった声がけが親身になってきました。こちらが変わった部分もあると思います。店をやっているので、「声をかける」ことが「営業」ととられると嫌だな、という身構えがあり、最初はなかなかこちらから踏み出せなかったんですが、最近は普通に話せています。とはいえ最初に無駄にがんばって近づいても相手のペースもあるし、うまくいかなかったかもしれません。店がオープンしてすぐにコロナの緊急事態宣言になってしまい、休業にしたり、テイクアウトだけにしたりと、大変な時期に何とかしようと一生懸命やっている姿を多分見てくれていたんだと思います。心配してくれる声や応援してくれる声が増えた気がします。がんばりを認めてくれたということがあったのかもしれないです。コロナは大変で、経済的には全く良くなかったけど、この点くらいは良かったかもしれません。印象的だったのが、店の周りが結構広い土地で、雑草が伸びきっているとゴミを捨てられてしまうので、時間をかけて草を刈っていたら、地元の方から「きれいに保ってくれてありがとうね」と言われたことがありました。とくに地域の目を意識してやっていたわけではないでんすけど、ちゃんと見てくれてるんだな、と思いました。子どもは娘と息子の二人なんですが、娘は地域に馴染むのが早かったです。でも男の子は移住後しばらく豊見城に帰りたいと言っていましたね。子どもたちもいろいろ考えながら成長しているんだなと思います。子どもがいる方にとって、移住を考える際に教育というのはやはり不安な要素だと思いますが、地域での教育の良い点は受け入れつつも、子どもたちの選択肢を狭めることだけは無いよう、しっかり考えていきたいですね。ステップ移住だったから、よかったこと最初に豊見城に住んだことで、東京や大阪とそんなに差を感じないで済んだことですね。生活において何かがなくて困ったことはほとんどないし、沖縄で暮らしていける、大丈夫だな、と思えました。(志穂さん)いきなり北部に来ても住めることは住めるんでしょうけど、移住してきたときのショック度が違ったかもしれないですね。これから移住する方へ、伝えたいこと自分で稼ぐスキルが必要だと思います。沖縄に来る前から、人との繋がりを増やしておくことも重要ですね。困ったときに助け合えるスキルと、人との繋がりがあればやっていける。移住してからスキルを学ぼうとするのはリスクが高いと思います。何かしら人を助けられるスキルがあって、それが周囲に伝わっていったら、仕事に繋がり、暮らしていけると思います。(取材日:2022年6月7日) お店の前で。前編を読む|若くして家族をもち、京都での社会人生活を経て、山本さんが最初の沖縄移住先に選んだのは、本島都市部の豊見城市でした。 山本さんが経営する、沖縄そば「いしぐふー やんばる店」Information沖縄県名護市安部505https://www.ishigufu.jp/shop/yanbaru おきなわ島ぐらし|名護市移住情報沖縄の先輩移住者インタビュー一覧へ