沖縄本島北部の東村に住む平良さんは、移住して10年になります。移住のきっかけや東村での暮らしについてお話を伺いました。先輩移住者プロフィール名前:平良 理恵(たいらりえ)さん職業:自営業出身地:沖縄県うるま市移住した時期:2014年移住場所:東村ーーーまず初めに、現在お住まいの東村について教えていただけますか?東村は沖縄本島北部にある村で、那覇から車で2時間ほどの距離です。人口は約1700人、近年ではファミリー層の移住が増えてきています。自然が豊かで、つつじやヒルギといった植物や、ヤンバルクイナ、アカショウビン、ノグチゲラなどの鳥、リュウキュウヤマガメといった生き物がそれぞれの季節で楽しめる環境です。(東村に咲くつつじ)ーーー東村に移住される前は、どのような生活をされていたのでしょうか?東村に移住する前はうるま市に住み、飲食店で働いていました。ーーー沖縄本島中部のうるま市にいらっしゃったのですね。東村への移住は何かきっかけがあったのでしょうか? また、この場所に決めた理由などがあれば教えてください。東村は義母の地元なので、お盆、お正月、法事、地域のお祭りなど、何か行事がある度に訪れていました。東村は自然豊かで緑が多く、ゆっくりとした時間を感じられるので、私にとってすごく癒される場所でした。そんな中、妊娠をきっかけに移住したいと思い、東村役場に相談に行ったのです。東村では移住定住支援の取り組みに力を入れており、協力的に対応してもらえました。私は利用しなかったのですが、45歳未満の子育て世代を対象に「東村子育て田舎暮らしを体験(1泊1,500円、最長13泊)」ができる制度もあります。ーーー移住前から東村へはよく訪れていらっしゃったのですね。平良さんが移住された当時から、東村では移住希望者の受け入れ体制が整っていたということですか?はい、そうです。役場の企画観光課に移住支援の窓口もあり、気軽に相談できて親身になってくれました。東村では随時、移住支援を増やしているので、検索してみると良いと思います。ーーー移住に関する支援はさらに充実してきているのですね。移住当時の家探しや引越しはどのようにされたのでしょうか?私たちは、タイミングよく村営団地に入居することができました。引越しは、レンタカーを借りて自分たちで行いました。東村には定住促進住宅も何ヶ所かあるのですが、利用率が高く、満室なことが多いです。家賃相場は沖縄県中部に比べると半分ほどで、平均35,000円ぐらいです。現在は持ち家に住んでいます。ーーー定住促進住宅が常に満室ということは、とても人気があるのですね。ところで、平良さんのお仕事について教えていただけますか?現在はカフェを経営しています。移住した当初は、保育所で調理をしたり、子育て支援センターで活動したりしていました。子育て支援センターは親子の遊び場で、子育て中の方との出会いがあり、悩みを相談することもできます。そのような場では村民との関わりも多く、すぐにお友達ができました。(平良さんが経営しているカフェ)ーーー自営業でカフェをされているのですね。一般的に東村での就業の際の選択肢はどのような状況でしょうか?東村は商業施設などが少ないため、選択肢は多くはないと感じます。移住した方の中には陶芸や伝統工芸にたずさわっている方などもいらっしゃるほか、夫婦で農業をして生計を立てている家族も増えています。東村では農業支援が充実していて、役場の方が農地探しを手伝ってくれることもあります。そのほかにも、新規就農研修生の募集や、沖縄県の新規畑人(はるさー)資金支援事業など、農業を始めるための支援はいろいろあります。ーーー新規就農者研修生の募集について教えてもらえますか?東村では、農業従事者になることに強い意欲がある方を募集しています。具体的には、パインアップルの生産者を目指す方を対象に実践的な研修が無料提供されるほか、資金や住宅、農地の確保といった面でさまざまな支援体制が整っています。ーーー東村は、農業支援にずいぶん力を入れているのですね。作物としては何を作っているのでしょうか?パインアップル、カボチャ、マンゴーなどです。東村は、沖縄県からパインアップルとカボチャの拠点産地に認定されています。また、東村には農家の高齢化や担い手不足などの問題に対処するため、村有地を開墾して作った「チャレンジ農場」というものがあります。チャレンジ農場では、パインアップルのブランド化や担い手の育成に取り組んでいます。ーーー拠点産地に認定されているということは、沖縄県としても東村でのパインアップルとカボチャ作りに力を入れているということですね。平良さんご自身のお話に戻りますが、休みの日はどのように過ごされていますか?移住前は夫の仕事が週末だったので、休日を家族でのんびり過ごすことは少なかったです。移住してからは夫の仕事も週末が休みになったので、家族で過ごしています。子どもが4歳、7歳、9歳なのですが、部活や習い事があるのでその応援に行くことも多いですが、予定がない日は、徒歩圏内に海や川もあるので、お友達家族とバーベキューをするなど気軽に遊びに行っています。ーーー移住されてご家族と過ごす時間が増えたのですね。東村での日常生活の買い物や、病院事情について教えてもらえますか? 近くの売店は品揃えが少ないので、買い物は週に1度、車で30分ほどの名護市にあるスーパーまで買い出しに行っています。病院は村内に診療所が1ヶ所あります。ただ小児科がないため、子どもを診てもらうときは車で30分くらいの大宜味村や名護市の診療所まで行っています。ーーーインターネットの環境に不便はありませんか?Wi-Fiに関しては、公共施設付近は繋がるので不便は感じません。光回線も、東村の全域で使えます。携帯電話は、山の近くや開拓されていない場所は電話会社によっては電波が繋がりにくい場所もあります。ーーー東村はファミリー層の移住が増えているとおっしゃいましたが、子育て環境についてどのように感じておられますか?東村にある保育所や学校の数は、保育所1ヶ所、幼稚園2ヶ所、小学校3ヶ所、中学校1ヶ所です。小さい村ですが、中心部に位置する小中学校から車で20〜30分ほどかかる地区もあるので、住む場所によっては保育所などが遠く感じると思います。幼稚園や小中学校の生徒数は100人以下と少なく、距離感が近くてとても良いです。また、放課後に小中学生が安全に過ごせる「フリースペースあがりキッズ」という学習・食事・生活支援をしてくれる居場所が設けられており、親も安心して働けています。また夏休みには、東村の中央公民館や体育館で子供たちを見守りしてくれるため、助かっています。ーーー放課後や夏休みに子供たちにとって安心・安全な居場所があるのは、働く親にとってはありがたいですね。お年寄りの方の住みやすさはいかがでしょうか?デイサービスも福祉施設もありますが、地域でのコミュニケーションの場も多く、お年寄りと接する機会が多いと感じます。例えば、鯉のぼりやハロウィン、クリスマスなどのイベントの時は、老人施設や保育所、役場も交えて交流しています。ーーー世代を超えた交流が活発にされているのですね。東村に台風が来た時の状況について教えてもらえますか? 台風の時は、特に他の地域との差は感じませんが、海沿いの地域では道路に海からの砂が堆積して除去作業が必要になります。豪雨による土砂崩れで通行止めになる道路がたまにありますが、特に不便を感じたことはありません。食料に関しても、近くの売店は可能な限りお店を開けているので、食料確保をそれほど意識していないです。ーーー平良さんが思う、東村の魅力や特徴はどのようなところでしょうか?海が綺麗で自然が豊かなところです。植物はサキシマスオウノキやオガタマノキなどの天然記念物もあり、生き物もたくさんいます。そして、街灯が少ないので、どこからでも満天の星が見えるのも魅力です。また、五穀豊穣を祈る豊年祭など地域密着型の行事やお祭り、東村の自然や歴史、文化を子どもが大人から学ぶ「てぃーだ学校」という取り組みも楽しめます。ゆっくりとした時間の中で家族と過ごし、日々心豊かに暮らせています。子ども達ものびのびと学校生活を送っています。ーーー行事やお祭りに参加し、すっかり地域に溶け込んでおられる平良さんですが、近所付き合いはどのようにされていますか?近所付き合いで困ったことはありませんが、人との関わりが苦手な人や、便利さを求める人、効率的な考え方の人は東村への移住は向いていないかもしれません。私自身、移住したばかりの頃は、子ども達の体調が悪い時の病院までの移動や、大型スーパーまでの距離にもストレスを感じることがありました。また、行事などへの参加を億劫に感じたこともあります。ですがその後、知り合いが増えて生活にも慣れていき、当初気になっていたことも今では楽しめています。それは、田舎の良さを感じて移住したいと思った気持ちが根本にあるからだと思います。ーーー地域の方との交流によって移住生活を楽しめているというのももちろんですが、もともと平良さんが東村に魅力を感じておられたということも大きいのですね。移住して困ったことや良かったことについて、もう少し教えてもらえますか?困ったことというのは、例えば近くにお店がないことですね。家族で外食する場所もあまりなく、コンビニまでは20分近くかかります。また、近くの売店は夜7時で閉まってしまいます。ですが、良かった思い出が多く、今では土地を購入し家を建てました。前向きな気持ちで過ごし、家族との時間が増えていくなかで心に余裕ができ、人との関わりも楽しく感じながら過ごせています。田舎は古い考え方も残っていて、無駄も多く気遣いも必要になります。でも、似たような考えの人が多く、距離感を大切にしながら家族での生活を大切に思っている人達が多いと感じます。ーーー今後の夢や目標を教えてください。近いうちに家の近くにお菓子屋さんをオープンします。村の特産品やお土産になるお菓子を増やしたいです。そして、子ども達の成長も楽しみにしています。ーーーとても素敵な計画ですね。それでは最後に、移住希望者に向けたメッセージやアドバイスをお願いします。東村での生活は現代的なものとはかけ離れていますが、子ども達の学校生活を見る限り、ゆっくりとした時間や自然の中で育つことの良さを強く感じています。不便な部分は行政がカバーしてくれることもありますし、周りの方との関わり方を一から始めてみるのも楽しいですよ。知らない土地での生活はとても不安に思うかもしれませんが、役場の方、地域の方など多くの方が声をかけてくれたり、助けになってくれたりします。移住10年目の私も、新たに移住された方の助けになれるよう声かけなどをしています。