現在沖縄県では国頭村、大宜味村、東村、伊江村、石垣市にお住まいの65歳以上の方を対象に、見守りサービス「やさしいみまもり」を2025年2月末まで無料で利用できる取り組みを行っています。この見守りサービスの特徴は、プライバシーに配慮しカメラ等は使わず、センサーを設置するだけで居住者の動きや睡眠時間を検知しデータ化できることです。また、記録されたデータはご家族の方がスマホやタブレットで簡単に確認することができます。今回、このサービスを利用しているご家族と、サービス運営企業の担当者にお話を伺いました。平良光明さん(右から2番目):「やさしいみまもり」利用者(父:大宜味村在住)金城利津子さん(一番右):「やさしいみまもり」利用者(子:大宜味村在住)佐久本さん(左から2番目):株式会社おきでんCplusC(運営企業)楠元さん(一番左):株式会社おきでんCplusC(運営企業)ーこんにちは、今日はよろしくお願いします。まずはじめにこの「やさしいみまもり」を知ったきっかけを教えてください。金城利津子さん(以下利津子さん) 村の刊行物で「やさしいみまもり」の説明会を開催するということを知り、興味を持ちました。というのも、ここ大宜味村に引っ越して3年くらいになるんですが、その前はずっと沖縄市に住んでいて、新型コロナが流行った時期も父のところに行けなかったんです。皆さんも記憶にあると思うんですが、その頃は高齢者と接触するのが難しい状況でした。特に沖縄市は感染状況が深刻な地域だったので、簡単に父のところに行けなくて。そのように安否確認もしづらく不安だった記憶もまだ新しかったので、見守りサービスが大宜味村にも来ると聞いたときは少し驚きましたが、その必要性を感じて関心を持ちました。そして、まずはどんなサービスかを知りたいと思い、気軽な気持ちで説明会に参加しました。ーそのときはまだ沖縄市に住んでいたのでしょうか?利津子さんいえ、そのときはもう大宜味村に引っ越していました。ただ、下の子どもがまだ小学生で今後また村外に引っ越す可能性もないわけではないので、このような見守りサービスを利用するメリットを感じました。また、そういう見守りサービスが大宜味村にあるということを私自身が知るだけではなく、私から周りに広めていくことも大事なのではという気持ちもあったんですね。実際、私が勧めた叔父のところにもこのサービスが導入されています。ー導入前に不安や悩みはありませんでしたか?利津子さん父はもともとガラケーを使っていたんですよ。ですのでこの見守りサービスで使うタブレットが届いたとき、父は戸惑っていました。子どもが使ってほしいと言うのでとりあえずやってはみたものの、使い方はもちろん、タブレットが何なのかも初めはわからない状況でした。ーそうですよね。平良光明さん(以下光明さん)この機械ね、タブレット、最初はもちろん操作方法もわからないですしね。寝ている時間と寝ていない時間を計るもの、ということはなんとなくわかったんですけど。そうしたら、サービスの担当の方が「音楽を聴いてもいいですよ」と言うんですね。懐メロとかも聴けますか?と聞いたら、大丈夫ですよと。いまは寝る前の30分間このタブレットで音楽を聴いているんですが、そのおかげで寝つきも良くなりました。利津子さんもともと父は寝床にCDがたくさんあるくらい音楽を聴くのが好きだったんですが、その流れでタブレットの使い方を覚えて、いまではタブレットで音楽を聴くようになりました。そして携帯電話もこのタブレットがきっかけで、ガラケーから、それまでずっと嫌がっていたスマホに変えたんですよ。ー「やさしいみまもり」がきっかけで、それまで苦手だったデジタル機器に徐々に慣れていけたのは思わぬ副次的効果ですね。良かったですね。利津子さんそうですね、「知らない」というのがやっぱり一番不安だと思いますので、デジタルの良いところも知ってもらいながらスタートできました。いまはもうスマホで写真を撮ったり、YouTubeをみたりとフルでいろいろ活用できているんです。そういう意味で、父の場合、このサービスを入れたおかげでデジタルに対する心のハードルが下がったことは大きな成果ですね。見守る以外にもこのサービスにそのような可能性があるということはひとつ証明できたと思います。光明さんグーグルもこれで覚えました。言葉をしゃべって検索したり。発音が悪いと違うものが出てきたりしますけどね(笑) それで、妹の旦那にも利用を勧めたんです。上等だよ、入れたほうがいいよ、と。利津子さんこういう見守りサービスは他にもあるとは思うのですが、スタッフの方がここ大宜味村まで来ていろいろフォローしてくださるというところも大変助かっています。また、地元企業である沖縄電力さんの系列企業という信頼感もありますし、その点での安心感もありました。同じ県内ということで近い感じもしますね。ーこのサービスの導入に必要な環境や設置場所などの条件を教えてください。佐久本さん「やさしいみまもり」は、Wi-Fiの電波を利用して人の動きを検知する仕組みなので、自宅にWi-Fi環境が必要です。機器設置の際にスマートフォンでアプリをインストールする必要があり、また、ご家族が設置後のデータを確認する際もスマートフォンを利用するため、見守るご家族はスマートフォンが必要となります。そして、見守られるご本人様はタブレットでデータを確認する形です。なお、現在は沖縄県の事業として国頭村、大宜味村、東村、伊江村、石垣市でこの取り組みが進められており、令和7年度2月末まではWi-Fi通信料に加え、センサー機器やタブレットが無料で提供されています。ー機器の設置方法についても教えてもらえますか?佐久本さんはじめにスマホに専用アプリをインストールしていただいて、そのアプリの中から、機械本体のうしろについているQRコードを読み込んで、コンセントに差すだけです。プラグ型の機械は日中過ごすお部屋に設置し、丸い機械は睡眠センサーなので寝室に設置します。これはWi-Fiを使うサービスなので、ネット環境や電波状況を確認しながら弊社のスタッフが設置を進めます。なお、今年の11月からは現地の協力員さんにもお手伝いいただきながら、そのような設置作業を行うことになっています。利津子さん実は私も現地協力員としてお手伝いさせていただく予定です。ーそうなんですね。現地の方がいると、お互いがより安心できますね。ちなみにこのサービスは機械に弱い人でも使えますか?利津子さんアプリの基本的な操作は難しくありませんが、何かのタイミングでログインのやり直しが発生すると、デジタル機器に苦手意識がある方はおっくうに感じてしまうかもしれません。光明さんいつもと違う画面になると、なんでかなと思っていろいろ試行錯誤はします。佐久本さんアプリのアップデートが定期的にあって、そのときに再ログインが必要になることがあります。ここは苦手意識がある方には負担に感じてしまう部分だと思いますし、問い合わせが多いトピックでもあるので課題ですね。利津子さん前期高齢者のかたはわりとデジタルに慣れている感じはします。後期高齢者のかたはいままで慣れたものに安心するので、このようなデジタルツールにはハードルを感じるでしょうね。最初から近くに協力員がいて、コミュニティなどで気軽に教えられる環境があったらいいと思ったのもあり、協力員としてサポートしたいと思いました。ー「やさしいみまもり」における緊急時の対応やサポート体制について教えてもらえますか?佐久本さん見守られているかたの動きや睡眠が一定時間(※)検知されない場合、アラートが発せられます。アラートのタイミングは、見守られているかたの生活や健康状態に合わせて設定できます。※利用者による個別設定が可能(1時間~47時間)アラートの受信者として複数名の登録が可能ですので、見守る目を増やすことで異変に気付きやすくなり、安心感の向上にもつながります。なお、緊急時に家族が対応できない場合、申し込み時に事前同意を得た地域関係者にアラートを通知することも可能です。自助を主としつつも、共助・公助も含めた地域全体で高齢者を見守る仕組みを目指しています。ー実際に使ってみて良かったことがあれば教えてください。利津子さん父がタブレットを通じてデジタルツールに慣れることができたこと、そして使っていくうちに、このデータを見て活用することが生活のリズムに組み入れられたのが良かったですね。光明さん睡眠時間をチェックするのが日課になっています。朝起きると、まず「ちゃんと眠れてるかな?」ってこのデータを見て、血圧を測って、朝ご飯を食べて、そうして畑にいきます。なので毎朝必ずこのデータは見ますよ。ー利津子さんもスマートフォンで光明さんの睡眠データをチェックしているんですよね?利津子さん「やさしいみまもり」を利用してみて気づいたのは、この測定データを自分の中でどう解釈するかが大事なのでは?ということです。データだけに振り回されないように、と言いますか、データとの適度な距離感を持ったお付き合いの仕方も大切だと思いました。”データが良くない”イコール“体調が悪い”というふうに思い込み過ぎないとか。そのあたりもITリテラシーなのかもしれませんね。光明さん私は睡眠障害と思われる傾向があったんですが、調べてみると、高齢になると6時間以上は寝ようとしても寝れないということがわかりました。なので、いまはタブレットで6時間眠れていることが確認できれば、ああもうこれで十分だ、と思えます。利津子さん逆に寝床にいない時間、つまり活動している時間もタブレットを見ればわかります。光明さんいまは365日、ほとんど毎日を畑で過ごしているんですが(笑)利津子さんいろんなデータの見方があって、睡眠の長さを見るというのももちろんそうなんですが、寝たきりの状態を長くさせないためのいろんなデータ活用法も今後は出てくるのではないかと思います。たとえば、在宅介護サービスなどと繋がっていれば、作業療法士さんを交えたアプローチの仕方も出てくるでしょう。そういう意味でもこのデータはたいへん多くの可能性を秘めていると思いますし、その可能性の広がりは関係者全員にとっても有意義なものになると感じています。ー確かにおっしゃるとおりですね。逆に「やさしいみまもり」を使ってみて困ったこと、負担に感じたことはありませんか?光明さん停電になってデータがとれないことがあります。そして復旧までに時間がかかると、タブレットが壊れたのかなと思ったりします。利津子さん自動復旧しない場合は、おきでんCplusCのスタッフさんに来ていただいています。私たちのほうで、ネット回線の不良なのかタブレットやアプリの不良なのか判断がつかないこともあって。そこに時間がかかるのはやむを得ないとは思うんですけどね。ー「やさしいみまもり」をこれからも使い続けたいですか?利津子さんお話ししたようにまだサービス自体の課題もあるとは思いますが、どんどん使っていかないといろいろ良くもならないですし、改善のチャンスもなくすのではと思うんですね。今後を見据えて使い続けていく、これからはこういうものも必要だよね、という視点を持ち続けることが大事だと感じていて。やはり、毎月人口が減っているここのような地域では、何かしら合理化を進めるものを取り入れていく必要があると思っています。出生率よりも高齢化率のほうが高いですし、この地域は産業もなかなかなく、人口も、入ってくる人より転出する人がどうしても多いので。去年のいまごろ人口が3,000名を切ったという新聞の報道があったんですけれども、そこからまた減っていますし。そんな背景もありますので、ツールを利用することで、私たちのメリットだけでなく、民生員さんたちも含めて見守る側の負担を解消していく必要があると強く感じますね。ー利津子さんは「やさしいみまもり」のユーザーであるだけでなく、この地域の状況をかなり俯瞰して見ていらっしゃいますね。利津子さん冒頭でお話ししたコロナ禍での体験がきっかけではあるんですが、今後も何が起こるかわかりませんし、そう考えるとデジタルツールの活用も今後は必要なんじゃないかと。新型コロナが流行ったことでいろんなものの感じ方は変わりました。自分たちの子どものことを考えても、いったんは学校の関係で親と離れて暮らすことになるはずなので、そうすると、また何か起きたときにどうなるんだろうと。ただ、子どもたちはデジタル慣れしてるので、私たちもそういうツールをちゃんと使えてうまく繋がれれば、何かあっても子どもたちも安心できるんじゃないかと思うんです。私もこの年齢になると先々のことで感じることも出てくるので、いろいろな意味でこのようなデジタルツールを使い続けていく必要性を感じています。ー「やさしいみまもり」を他の人にも勧めたいですか?光明さんはい、はじめにお伝えしたように妹の夫に勧めて、実際に彼らも使っています。子どもたち家族は那覇と名護にいて、彼自身はいま一人で住んでいるものですから。利津子さん叔父は実際に一度トイレで倒れたことがあり、そのことを叔父や家族も気にしていたんですね。なので、これを入れたほうがいいよと勧めました。ときどきは私たちも様子を見に行くんですが、やはり頻繁に行けないときもありますから。「やさしいみまもり」があると、子どもたちもいつでもデータを確認できるので。またこの「やさしいみまもり」というサービスは、見守られる人のプライバシーへの配慮をコンセプトとして開発されています。なので、カメラでチェックすれば一目瞭然なものを、敢えてWi-Fiセンサーだけを使ってデータを取っている点が、とてもいいと思うので人に勧めたいです。【サービス解説】「やさしいみまもり」について「やさしいみまもり」は、wi-fiセンシング技術を活用して、プライバシーに配慮しながら高齢者などの活動状況や睡眠時間を確認することができる見守りサービスであり、沖縄県の事業として国頭村、大宜味村、東村、伊江村、石垣市でサービスを提供しています。仕組みとしては、寝室やリビングなど見守り対象者が一日を通して長く居る場所にセンサーを設置します。家の中で人が動いているかどうか、また、睡眠・休息時間をそれらのセンサーが感知し、データとして記録する仕組みです。プライバシーに配慮しカメラやマイクを使わないことや、記録したデータをスマホやタブレットで簡単に確認できることが特徴です。記録データから、「昨日に比べて今日は、少ししか眠れていないようだけど大丈夫かな?」、「外出頻度が先週より増えているみたい!元気そう!」など、離れて暮らしていても24時間365日ご家族の状況がデータ中からわかる仕組みとなっています。